第3回:全体会「移民国家はいかに通訳認定制度をつくったか?」

 全体会では「移民国家はいかに通訳認定制度をつくったか?』というテーマでスイス連邦・EU諸国・アメリカにおける通訳認定制度について紹介します。今日はその中でもスイスについて取り上げたいと思います。

みなさんスイスについてどんな印象を持っていますか?
スイス銀行、時計、ユング、永世中立国、チョコレート、アルプスの山々、アルプスの少女ハイジ・・・いろいろなイメージがあるのではなないでしょうか?でも、スイスが人口の22パーセントが外国人が占める移民国家であるという事を知っている人は以外と少ないと思います・・・・

 スイスはドイツ、フランス、イタリア、オー ストリア、リヒテンシュタインなど多くの国と国境を接していて、こうした地理的環境から歴史的に様々な民族を受け入れてきました。公用語はドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4言語を採用しています。

なんとスイスの人口の1/3が移民、移民の子孫によって構成されているといいます(2001年連邦統計)まさに移民国家と言えますね。また、同時に人道主義から難民を受入れてきた国で、冷戦、ユーゴ、ソマリア紛争の際に難民を多数受け入れてきました。 

スイスにおける医療通訳

 1990年代のスイスでは通訳の必要性は以前から認知されてはいたものの、プロフェッショナルとしての通訳、通訳制度は確立しておらず、家族や友人、あるいは移民支援団体などによる通訳が主流でした。こうした中、1991年から勃発したユーゴ紛争よって、クロアチア、セルビア、コソボから移民や難民を多数受入れたことをきっかけに、プロフェッショナルな通訳者が必要であるという機運が高まりました。1999年に連邦政府は「インタープレット*」を設立し、通訳基準とそれにもとづいた研修モジュールを作成、2002年より研修を受けた通訳に対する認定を開始しました。
 スイスの通訳制度の特徴は個人に対する「資格」の付与だけでなく、認定通訳が機能するためのシステムを構築していることです。インタープレットが作成した研修モジュールや認定基準に従って、を各地の民間団体(移民支援団体など)が研修を行っています。また、研修を終えて認定を受けた通訳者は、仲介団体に登録し、団体を介して派遣されます。この仲介団体はスイス各地に複数存在していて、利用者との契約、通訳の派遣業務、通訳の労務管理、通訳の品質の維持を一部政府の支援を受けて行っています。

 また、スイスで認定通訳を利用できるのは、個人ではなく団体(病院や学校)となっています。ですから通訳費用は団体が負担しています。個人での利用ができないため利用が限定的になるのではないかと感じる人が多いと思いますが、実際には年間十数万時間を超える利用があります。こうした数字からも団体が必要なサービスとして積極的に通訳を利用していると言えるでしょう。

*官設民営の異文化通訳に関する協会

2013年11月にスイスでヒアリングを実施してきました。全国会議では研修と認定についてや派遣制度などについて詳しく12/15の全国会議の全体会で紹介したいと思っています。